AGA治療を長く続けていると、ある時期から急に抜け毛が増え始め「ついに薬に耐性がついてしまったのか」と恐怖に震える瞬間が訪れることがありますが、このいわゆる「二次脱毛」が薬の耐性によるものであるという説は、現在の医学的な見解においては否定的な意見が主流であることをまずは知っておくべきです。フィナステリドやデュタステリドといった5αリダクターゼ阻害薬は、酵素の働きを物理的にブロックする作用機序を持っており、細菌に対する抗生物質のように菌が進化して耐性を持つといった現象とは根本的に仕組みが異なります。また、数年単位の長期臨床試験においても、効果が減弱するという明確なデータは確認されておらず、多くの患者が十年以上にわたって効果を維持しているという事実があります。ではなぜ、耐性がついたと錯覚するほど長く激しい二次脱毛が起きるのかというと、それはヘアサイクルの「揺り戻し」現象と、加齢による進行の力が薬の抑制力を上回ろうとする拮抗状態、そして季節や体調による変動が複雑に絡み合っているからです。特に治療開始から一年から二年目は、初期に生え揃った髪たちが第一期のライフサイクルを終え、次の世代へとバトンタッチする時期に当たりますが、この生え変わりがスムーズにいかず、一時的に休止期の割合が増えてしまうことがあります。これが二次脱毛として認識される現象の正体の一つです。さらに、「長い」と感じる要因として、AGA治療薬はあくまで進行を遅らせるものであり、加齢による自然な脱毛力の増加を完全にゼロにすることはできないという限界点も理解しておく必要があります。年齢を重ねれば誰でも髪は細くなり本数は減るため、薬を飲んでいても緩やかな右肩下がりのカーブを描くことは避けられず、その自然な老化現象を「薬が効かなくなった」と誤解してしまうケースも少なくありません。もし二次脱毛が半年以上続き、明らかにボリュームが減っていると感じる場合は、耐性を疑うよりも、薬の濃度や種類を見直す(例えばフィナステリドからデュタステリドへ変更する)、ミノキシジルの濃度を上げる、あるいは生活習慣の乱れ(睡眠不足、過度なストレス、ダイエットなど)がないかを見直すことの方が建設的です。薬は魔法ではなく科学的なツールであり、その効果には波があることを前提とし、一喜一憂せずに淡々と服用を続けることが、結果として最も長く髪を維持する秘訣となるのです。耐性という言葉に怯えて治療をやめてしまえば、その瞬間からAGAの猛烈なリバウンドが始まり、それまでの努力が水の泡になってしまうことだけは避けなければなりません。
薬の耐性説を検証する二次脱毛の真実