私の髪の悩みが本格的に始まったのは、30代後半に差し掛かった頃でした。仕事のストレスがピークに達していた時期と重なります。朝、鏡の前に立つと、頭頂部の分け目が以前よりもくっきりと白く見え、光の加減によっては地肌が透けているように感じるようになりました。最初は気のせいだと思おうとしました。でも、シャワーを浴びるたびに排水溝に溜まる髪の毛の量は、明らかに増えていました。その日から、私の日常は少しずつ色褪せていきました。美容院に行くのが苦痛になり、友人から食事に誘われても、照明が明るい店は避けたいと思うようになりました。人と話していても、相手の視線が自分の頭に向いているような気がして、会話に集中できません。常に誰かにジャッジされているような、言いようのない不安感に苛まれていました。何とかしなくてはと、インターネットで評判の育毛剤を試し、高価なスカルプケアシャンプーにも手を出しました。しかし、数ヶ月使っても劇的な変化はなく、ただ焦りと失望だけが募っていきました。そんなある日、ふと、私は外側からのケアばかりに躍起になって、自分の体そのものを全く労ってこなかったことに気づいたのです。食事はコンビニのお弁当で済ませ、睡眠時間はいつも後回し。考えてみれば、髪が悲鳴を上げるのも当然でした。そこから私の挑戦は、内側からのケアへとシフトしました。まず、タンパク質と野菜中心の自炊を心がけ、どんなに忙しくても7時間は眠るようにしました。週末にはヨガに通い、心と体をリラックスさせる時間を作りました。すぐに髪が生えてくるような魔法はありませんでした。でも、半年ほど経った頃、体の調子が良くなるとともに、抜け毛が減り、髪に少しだけコシが戻ってきたのを感じたのです。何より、自分のために行動しているという事実が、私に自信を取り戻させてくれました。今でも悩みが完全になくなったわけではありません。でも、鏡の中の自分と、少しずつ向き合えるようになりました。
鏡を見るのが怖かった私の髪の悩み