薄毛の前兆として抜け毛の増加ばかりに気を取られがちですが、実はそれ以上に緊急性が高く、かつ見過ごされがちなサインが「フケ」と「過剰な皮脂」の発生であり、これらは脂漏性脱毛症という恐ろしい病態へと繋がる入り口です。人間の頭皮には常在菌であるマラセチア菌が存在し、普段は大人しいのですが、ストレスや食生活の乱れ、ホルモンバランスの崩れによって皮脂が過剰に分泌されると、この菌が皮脂を餌にして爆発的に増殖し、その代謝産物が頭皮を刺激して炎症を引き起こします。この炎症反応の結果として、頭皮のターンオーバーが異常に早まり、未熟な角質が大量に剥がれ落ちるのが「フケ」であり、毛穴周辺が炎症を起こして毛根が保持できなくなるのが「抜け毛」です。特に危険なのは、湿り気を帯びたベタベタしたフケが出る場合で、これは脂性のフケと呼ばれ、毛穴に皮脂とフケが混ざった角栓が詰まり、酸化して過酸化脂質となることで毛母細胞を直接攻撃し、息の根を止めるように脱毛を加速させます。朝シャンをしたのに夕方には髪がベタつく、スマホで通話した後に画面に皮脂がべっとりとつく、頭皮から油っぽい臭いがするといった症状があるなら、あなたの頭皮はすでに皮脂の洪水状態にあり、いつ脱毛のスイッチが入ってもおかしくない状況です。逆に、パラパラとした乾いたフケが出る場合も安心はできず、これは頭皮のバリア機能が低下し乾燥による炎症が起きているサインであり、やはり健康な髪は育ちません。フケや皮脂の異常は、単なる不潔さの問題ではなく、頭皮という生態系のバランスが崩壊しているというSOSサインであり、これを市販の強力な洗浄力のシャンプーで洗い流そうとすると、かえって乾燥を招き皮脂分泌を促すという悪循環に陥るため注意が必要です。正しい対策は、抗真菌成分(ミコナゾールなど)や抗炎症成分を含んだ専用のシャンプーを使うこと、ビタミンB2・B6を摂取して皮脂コントロールを行うこと、そして脂っこい食事を控えることです。フケが肩に落ちるのを恥ずかしいと思う前に、それがハゲへの序章であるという危機感を持ち、皮膚科での適切な治療を受けることが、脂漏性脱毛という泥沼から抜け出す唯一の道なのです。